第一章
萌
仕事マインドはいつもニュートラル
我が家からお気に入りのBGM「加山雄三」をかけながら、西海岸の湾岸道路を走るとほんの20分ほどで那覇事務所に到着する。そして我が家から国道を北へ20分程度で北谷事務所へ到着する。仕事内容やお客様対応に合わせて、北へ南へとフットワーク良く動く。今日は北谷でお客様と面談で、午後は那覇で相続の社内ミィーティングだ。
今日も軽快にBGMを流し車窓から海を眺めながら、事務所へと向かう。
「いい感じですよ」はどんな感じ?
F会社の税務顧問になったのは10年前くらいだろうか。売上は安定しているはずなのに、「なぜか資金繰りが厳しくて、税金も払えない」とF会社の取引先から紹介されてO社長に初めてお会いした。落ち着きのある雰囲気で、物静かな方だった。お話を一通り聞いて資料を持ち帰り、後日、改めてお会いした。改善点はたくさんあった。早速顧問契約を交わした。一つ一つ説明をしながら着実に進めていった結果。経営は安定してきたようだった。「O社長が今度、新車を買うと喜んでいましたよ。」担当者がO社長の喜びの様子を楽しそうに報告してくれた。少しシャイなO社長のはにかんだ笑顔が目に浮かぶ。
法人と個人の資産のバランスを見直ししたり、役員報酬の所得税対策をしたり、更に新たな提案をした。この提案に当初、社内では「O社長に理解していただけるでしょうかねぇ?」と担当者もいぶかし気だった。二日後、事務所にお招きしプレゼンテーションを行った。一通りの説明が済んで「いかがでしょうか?」と聞くと、シャイな笑顔はそのままににっこり笑って、「はい。それを実行しますよ」と了承してくれた。すぐに改善プランに取り掛かった。一年後の決算前に、久しぶりにO社長を事務所にお招きした。 「O社長、その後改善プランの実行でいかがでしょうか?」とお尋ねすると、 ニンマリ笑って「いい感じですよ。」とおっしゃった。 その言葉に、その場にいた皆で大笑いした。O社長の雰囲気から「いい感じですよ」というコメントを想像していなかったからだ。愉快に笑うO社長に皆がつられた。
F会社はその後も順調だった。O社長は普段、プライベートな事はあまり話さないタイプの方だが、60代に入りそろそろ退職や事業承継の話もせねばならない。私と歳が近いこともあり、久しぶりにあってもすぐに、明るく打ち解けて話してくださる。世間話の後に色々と問いかけたら、様々な悩みを抱えていることが分かった。時の経過と共に子供たちの学費負担が増え、O社長の個人のキャッシュフローが厳しくなってきたのだ。私もまさにその一人だったので、O社長の抱える悩みもよく分かる。
環境も市場も会社も、時間の経過と共に変化していく、適正な税務の提供だけでなく、いつも経営者に寄り添い的確なアドバイスやプランをお客様は欲していると実感する時だ。